Night 4.『スターバックス』
ガラガラ
シュッ
フー
男「今日、スターバックスに行ったんだ」
女「へえ、いいじゃない。コーヒーを飲みに?それとも何か作業をしに?それかもっと本質的な目的があったとか?」
男「本質的な目的か、あながち間違いじゃないかも。女の子とデートをしに行ったんだ」
女「あ、勝手に1人で行ったのだと思っちゃった。ごめんなさい」
男「いいよ、事実は違うからね。事実と違うことを言われても頭にこないもんだよ。悪口だってそう、『じぶん』という的を射ているを言われると腹がたつけど、それがまったく見当はずれだと何も感じない」
女「そうね、確かに。で、デートは楽しめた?」
男「デートを楽しめたというより、スターバックスを楽しめたと言った方が正確かもしれない」
女「へえ、そうだったの。理由は何であれ楽しめたのなら良かった」
男「デートって苦手なんだ。今日会った子は友人の紹介みたいなもので、今日が初対面だったんだけど、初対面の子とデートは気疲れするね。楽しむ余裕なんてないぐらい、偽りの自分を演じていた気分だった」
女「そんなに気を使う子だったの?」
男「初めて会う人には誰にでも気を使ってしまうんだ。君はそういうことはない?」
女「気を使うというか、少し人見知りはするかも。何を話せばいいのか分からないし、頑張ってその場を楽しい雰囲気にするのも疲れちゃうし」
男「僕も人見知りなのかも。そもそも人見知りってなんだろうね。誰が決めたわけでもないし、誰かに決められるものでもない。自分が勝手にそう思ってるだけで、自分は人見知りだと決めつけちゃうんだよ」
女「そしたら、人見知りには初デートって楽しめないのかな?」
男「僕はそうかもしれない。初デートってその名の通り初々しさがあったり、ドキドキしたり、思い出してからも楽しくなるものだと考えてたけど。僕はそういう経験は無いな」
女「相手によるのかな」
男「どうだろう。けど言えることは、今日は全くそういう気分にならなかった。多分、女の子が感じたことは僕と同じだと思う」
女「そういうことってよくあると思う。誰が何が悪いとかじゃなくて、必然的にそうなっちゃうのよ。けどもちろん、初めて会った時から何かを感じて、理由も分からずに幸せな気分になることもある、っていうことが人との出会いの良さだと思うな。誰と会っても同じ感情になるなんて退屈よ。だからどんな出会いも大事なんだと思う」
男「今日の出会いも大事だったってことか」
女「次会った時に何か変わるかもしれないし、変わらないかも。それかもう会わなくてもいいかなって考えてる?」
男「いや、また会いたいとは思ってるよ」
女「それで十分よ。会いたくても会えない人だっているんだから」
男「君はそういう人はいるの?」
女「もちろん。ボーッとその人のことを考えたり、恋愛的な感情があるわけじゃないけど、ふとした時に会いたくなるの。友達でもないのに」
男「君がどういう人に会いたくなるのか気になるな」
女「教えないわよ、なんとなく」
男「なんとなく、か。じゃあ、気が向いた時に教えて欲しいな」
女「分かったわ。あなたももしそういう人がいたら教えてね」
男「うん、もちろん」
ジュッ
ガラガラ