Night18.『染み付いたシャツ』
ガラガラ
シュッ
フー
女「タバコを吸う女の子ってさ、やっぱり男子ウケ悪いのかな」
男「まあ、場合によってはね」
女「あなたはどう?」
男「自分が吸うし、、、それはあんまり関係ないんだろうけど、僕は特に気にしないよ。コーヒーを飲むとか、フリスクを持ち歩いているだとか、そういうのと変わらないと思う。なんで急にそんなこと気になったの?」
女「最近気になる人ができたんだけど、どうやらタバコを吸う女の子だけは嫌だとか言ってるみたいでさ。それも女友達っていう関係の子が吸うのは問題ないんだけど、彼女ってなると絶対嫌なんだってさ。そういうものなの?」
男「普段身につけてる物、例えばアクセサリーだとか服だとかが汚れてたり壊れてたりしたら、家の中でだったらいいけど外に出る時は身につけたくないだろ?」
女「もちろん。見栄えが悪いし、そういう女の子だって思われたくないもの」
男「つまりそういうことなんだと思うよ」
女「恋人はアクセサリー?」
男「かなり悪く例えるとね」
女「じゃあ彼は、タバコを吸う女の子を彼女として横に並んで歩くことはトマトソースが染み付いたホワイトシャツを着て外を歩くことと同じだと考えているの?」
男「否定はできないと思う。もしそうだとしたらタバコやめる?」
女「やめるわけないじゃない。そこまで自分を変えてまで付き合いたいだとか横を歩きたいなんて微塵も思わないもの」
男「多分だけど、男が彼女に求めるのは中身より見た目だと思う。タバコもそうだけど、ファッションはもちろん、ピアスだとかヘアカラーだとか、自分と相手の身長差だとか。稀なケースだとタトゥーとかね。自分の中に最低限のチェック項目があって、そこをクリアしないと彼女っていう存在にしようとはしないよ。付き合うとしても友達に紹介するとかSNSに載せるとかしない」
女「まさにアクセサリーね。それは好みとは違うの?」
男「好みが加点ポイントだとすると、その最低限をクリアしないと加点も減点もないんだよ」
女「めんどくさいわね」
男「男が全員そういうわけじゃないけどね。ただSNSの流行でその風潮は顕著になってると思うよ。彼女可愛いねって一言は男にとっては大きなステータスになるし自己肯定感にもなる」
女「あんなのいくらでも加工できちゃうのにね。しょうもない。」
男「まあ、恋人がいない人が言ってもどうにもならないんだけどね。自分がその当事者になることだっていくらでも考えられるし」
女「あなたはあるの?彼女に求める最低限チェックポイントとやら」
男「見た目的な問題だと、似合ってればなんでもいいかな。タバコ吸ってても髪が何色でもピアスばちばちでもタトゥーが入ってても。でも似合ってなかったりイケてるって思えなかったら嫌だな。完全な自己基準だけどね」
女「それ、いちばん性悪だしいちばんめんどくさいよ」
男「君は全く気に入ってないデザインの服を買う?」
女「絶対買わない」
男「つまりそういうこと」
女「納得しちゃった」
男「こんなこと考えてるから恋人ができないんだと思う」
女「私も人のこと言えないからなぁ。恋人はパジャマだって考えればいいんじゃない?」
男「パジャマ?」
女「パジャマは着心地の良さが大事、つまり恋人は居心地の良さが大事。見た目は二の次にして、性格とか相性を重視しなきゃ。見た目だけで分別してちゃキリないわよ」
男「君は全く美味しそうに見えない料理を食べたいと思う?」
女「思わない。もしかして、そういうこと?見た目が好みじゃないと中身を知ろうともしないって」
男「そういうことだね。よくさ、自分より年上がいいだとか年下じゃないと嫌だとか言う人いない?」
女「掃いて捨てるほどいる。実際私は、というか女の子は大体そうなんだろうけど年上の方がいいな」
男「じゃあ、見た目がとてもタイプで、性格も合うし一緒にいて楽しいし絶対付き合いたいって人がいたとしよう。大好きになってから、相手が実は年下だって分かった途端に幻滅する?」
女「しないかな」
男「そういうこと」
女「それは異議あり。だって年の問題なんて絶対そうじゃないといけないってわけじゃないもの。ただの理想なだけで。理想が壊れたからってそれだけで簡単に人を嫌いになんてならないわよ」
男「そういうことか・・・」
女「そう簡単に人を好きになることもなければ嫌いになることもないわよ。私はね」
男「タバコを吸う女は嫌いって言ってた男は?」
女「タバコを吸う女を好きにさせてみる」
男「応援してる」
女「ありがと」
ジュッ
ガラガラ