Night16.『結局は翔太より龍平より優作』
ガラガラ
シュッ
フー
女「ねえ、松田龍平か翔太だったらどっち派?」
男「それは簡単な質問だね。もちろん翔太だよ」
女「やっぱりか」
男「なにがやっぱりなの?」
女「いや、この前スタバに行ったらさ、いまだに松田翔太ぶった格好してる人がいたんだよね。だからなんとなくそれを言いたくて、質問した。ごめん、龍平か翔太かなんて実際のところ全く興味ない」
男「言いたいことがあるけどストレートに言うのが躊躇われるからって、質問から会話に入る手法か。たまにやっちゃうよね。自分の恋愛事情を話したいが為に、まず相手に最近どう?とか聞いたりね」
女「わざわざそこまで深掘りしなくてもいいのよ。間違ってないけどさ」
男「それで、松田翔太がなに?」
女「さっき言った通りよ。刈り上げて前髪センター分けでリングのピアスしてTシャツをスキニーパンツにインしてる、松田翔太の雑兵のこと。まだいるんだなーって思って。とっくに絶滅したもんだと思ってた」
男「マンモスですら冷凍保存されてるぐらいだよ。そう簡単に物事は絶滅しない。で、その松田翔太の雑兵が気に食わないの?」
女「そんなことないわよ。松田翔太は好きだし、、、まあ龍平の方が好きだけど。そういう着こなしも嫌いじゃない。だけどさ、彼らってなんでそんなことするんだろうね」
男「かっこいい人の着こなしをマネすること?」
女「そう」
男「そりゃ、模範解答がそこにあるからだよ。確かに「その人」がやるからこそ成立するファッションもあると思うけど、そのスタイルが「かっこいい」ものとされているんだ。ていうか、俳優とかアイドルとか、インフルエンサーがそういうものにしちゃってるんだよ。マネをしたいっていう思いは本当のところはそこまで大きく無くて、ただ流行りに乗ってるだけ。響きは良くないかもだけど、ファッションにおいては流行りに乗るっていうのはとても大事なことなんじゃないかな」
女「ヒップホップも流行に乗ることが大事って、たしか誰かも言ってたな」
男「なんで急にヒップホップ?で、誰?」
女「SOUL'd OUTかな」
男「ごめん、分からない」
女「でね、今日見たその雑兵はね、面白くないことにすごい似合ってたのよ、その格好が。松田でも翔太でも無いくせにね。だからマネから入って、もうすでに自分のものにしちゃってるんだよね。マネというより、オマージュっていうか。まあ、ボルビック片手に持ってことは本気で気に食わないんだけど」
男「ボルビックに何か嫌な思い出でもあるの?僕は正直ファッションについて詳しい分けじゃないし、こだわりがあるわけでもないから分からないけど、服が好きな人に憧れるよ。みんなカッコいい。服にこだわるってこと自体、もうすでにカッコいいんだよ」
女「結局ファッションってなんだろうね。お洒落の定義ってなに?ニューヨークのネタでさ、「お前はお洒落じゃなくてただ服が好きなだけ」ってのがあってさ、あー確かにいるなーって思ったんだけど、じゃあ、お洒落な人ってなにが違うんだろうね」
男「それはお洒落な人に聞くしか分からないよ」
女「じゃあ、お洒落な人はどんな人?」
男「難しいね。なぞなぞ?」
女「そうじゃなくてさ。お洒落な人って、結局は第三者の見解に結論が帰還するもんなのかなって。どれだけ自信満々でお洒落しても、それを見た人がどう思うかでしょ?しかもその答えも、誰が判断するかによって変わるし。難しいわよ。なぞなぞよ。だって私、世間一般ではファッショニスタとして絶大な指示を得てる菅田将暉のファッションすごい嫌いだもん」
男「すごい嫌いなファッションなんてあるの?それはそれで珍しいと思うけど」
女「じゃあさ、今2人だけでお洒落の定義決めましょうよ」
男「いいね、そうすると今後こういう話をするときにベクトルを合わせやすい」
女「私がお洒落だなーって思う人は、洗練されてない感じがある人かな。生活感が見えるというか雑さがあるというか、作り物じゃない感じ。分かる?」
男「例えば誰?」
女「リリーフランキーとか」
男「ごめん、それはちょっと理解できないな」
女「じゃあ、あなたは?」
男「君の言う、洗練されて作られた感じがないっていうのは分かる。だけど、やっぱり僕は洗練してる人の方がこだわりがあって、自分をしっかり理解して作り上げてる感じがしてお洒落だなーって思うな」
女「例えば誰?」
男「リリーフランキーかな」
女「リリーフランキーの名前出してスベるなんて、あなた時代が時代なら切腹ものよ」
男「ごめんなさい」
ジュッ
ガラガラ