ベランダチルタイム -ショートショート-

ベランダで話す男女2人の会話の妄想

Night10.『りんごりら』

ガラガラ

 

シュッ

 

フー

 

男「しりとりしよう」

 

女「いいよ」

 

男「りんご」

 

女「ごりら」

 

男「やっぱりごりらか」

 

女「なに?」

 

男「ユーチューブでさ、 千原ジュニアと小藪とフットボールアワーのチャンネルがあって、 こういうことの話題だったんだよ。 しりとりでりんごの後にごりら以外を言うやつはカッコいい、 みたいな」

 

女「ざっくりハイタッチのメンバーじゃん。なにそれ面白そう」

 

男「うん、かなり面白いからおすすめ」

 

女「で、私はごりらって言っちゃった感じか」

 

男「大丈夫、その動画でも、、、まあ見てほしいな」

 

女「 しりとり界隈ではりんごの後にはごりらって決まってるのよきっと 」

 

男「りんご、ごりら、ラッパの流れは確かに決定事項感があるね。 ボクシングの試合で初めに拳を合わせる感じで」

 

女「じゃあもう、ぱ、から始めればいいのに」

 

男「そこはさ、 お互い分かりながらでもそのくだりはやらなくちゃいけないんだよ 」

 

女「すっごい無駄な時間ね」

 

男「一理ある。けどウォーミングアップとして大事なんだよ」

 

女「しりとりにウォーミングアップってあるの?」

 

男「もちろん、気持ちの切り替え的な」

 

女「りんご、ごりら、ラッパのくだりが?」

 

男「野球の試合前ノック的なさ」

 

女「あれは確実なウォーミングアップじゃん。 これからの試合に勝つための連携の確認だったり声出しだったり。 けどしりとりのそれとは違うんじゃない?」

 

男「しりとりも同じだよ。 これからのしりとりに勝つためのリズムと発声の確認」

 

女「そもそも、しりとりを勝つためにしてる人なんているの? 絶対こいつに勝ってやるなんて意気込んでしりとりしてる人マジで 0人説あるよ」

 

男「じゃあ君は何のためにしりとりをするの?」

 

女「暇つぶしと、若干のコミュニケーションかな。 そんなこと考えたこともない」

 

男「もったいない。 しりとりから得られる知識と経験ってたくさんあるよ」

 

女「例えばなに?」

 

男「語彙力とか。新たな言葉を知るとかさ」

 

女「新たな言葉を知るって、、、 相手が知らない言葉をしりとりで使うって結構タブーじゃない? なんでもありじゃんそれ」

 

男「そしたらググればいいんだよ」

 

女「 しりとりでグーグル使うのってそれだけは絶対やっちゃいけないこ とだと思うんだけど。マラソンで原付使うようなもんよ、それ」

 

男「よし、それじゃあ、しりとりしようか」

 

女「意気込んで最初のくだりやればいいのね」

 

男「りんご」

 

女「ごりら」

 

男「ラビリンス」

 

女「いやラッパは?」

 

男「りんご、ごりらの後は絶対ラッパって言っちゃう説」

 

女「ていうか、ラビリンスってなに?」

 

男「ググってみて」

 

・・・・・・

 

女「でてきた。迷宮だってさ」

 

男「かっこよくない?」

 

女「全然かっこよくない」

 

ジュッ

 

ガラガラ