Night 9.『あつまれ自己満足の森』
ガラガラ
シュッ
フー
女「最近、暇かも」
男「まぁ、家から出れないとね、やることは限られるし仕方ないよ」
女「家で何してるの?」
男「映画、読書、睡眠。だいたいこの三つかな」
女「ふーん。まぁそんなもんよね」
男「どうぶつの森っていうゲームをやりたいんだけどさ、いまいち買うまで行動できてないんだよね。知ってる?どうぶつの森」
女「もちろん。DSでもWiiでもやってたし、今回のも気になってる。けど、そこまでやりたいって気持ちはないかも」
男「どうして?」
女「なんとなく、楽しめなさそう。私ね、たかがゲームでも情が移るというか、大切にしちゃうのよ。どうぶつの森ってまさしく『大切にする』ことが大事じゃない?自分だけの森をコツコツ作って、世界を作るの。誰1人として同じものはできない、頭の中を2次元の森に映し出す感じ。そう考えちゃう」
男「考えすぎだね」
女「うん、わかってる。だから今やっても絶対良い森なんて作れなさそう。理由はないけど直感的にそう思うの。惰性でやっちゃいそう。正解なんてないからそれでもいいんだろうけど、それだと意味がない気がして。森は誰でも作れる一つの作品、だと思う」
男「どうぶつの森は自分だけしか作れない一つの作品か、、、それは確かにそうだね。でも君と同じように考えてあのゲームを楽しんでる人なんて少数派じゃないかな?」
女「もちろん。そもそも何のために森を作るか、誰に向けて作るかのベクトルはバラバラだから、みんなが同じ気持ちでプレイするなんて考えられない」
男「明確なゲームクリアがあればね、目標は一時的に定まるけど、どうぶつの森とかのんびり系ゲームはそれがないからね」
女「そうそう。あと多分だけど、ああいうゲーム好きな人って自己顕示欲が強い人に多いと勝手に思ってるんだけど、違うかな?」
男「君はどうなの?」
女「強い。かなりね」
男「そんな感じはしなかったけど、そうなんだ」
女「何のために森を作るのか、、、それも何時間もかけて毎日毎日、義務感すら覚えて没頭して作る森になんの意味を持たせたいのか。私は誰かに褒められたい、センスを認めてもらいたい、羨ましがられたい。正直な気持ちはそうなの」
男「ただの自己満足で作るわけじゃないんだね」
女「自己満足ももちろんある。自己満足ってネガティブなイメージ持たれるんだろうけど、私の自己満足は誰かに褒められること。だから自己満足って理由でもあるわね」
男「自己満足か。自己満足が、周りの人を幸せにしたいとか、自分の身を削ってでも誰かのために屈したいことだったら、とても良いことだね。立派な自己満足だ。でもそれもただの自己満足で、悪く言えば自分中心、自分勝手っていう意味と結び付けられるから難しいね」
女「あなたはどうぶつの森を買ったら、何のために森を作るの?」
男「暇つぶしかな」
女「暇をつぶせれば満足?」
男「もちろん。役目は果たしてる」
女「それも自己満足?」
男「そもそも他己満足なんてない。他己満足は、他者を満足させたいっていう自己満足だ」
女「なるほどね。なんかよく分かんなくなっちゃった」
男「同じく」
女「また今度どうぶつの森の話をさせて」
男「お、それは自己満足?」
女「覚えたての言葉をすぐに使いたがる小学生みたい」
ジュッ
ガラガラ