Night 8.『フィルム女子の定義』
ガラガラ
シュッ
フー
女「クロノスタシスって知ってる?」
男「知らない」
女「時計の針が止まって見える現象のことらしいよ」
男「きのこ帝国じゃん」
女「そう、やっぱり知ってたんじゃん」
男「最近久々にMVみたんだけど、俗に言うエモいって感情になった」
女「いいよね、あのMV」
*これです
男「350mlの酒缶持って歩いてる女の子であんなに魅力的になるのはすごい」
女「私たまにするよ。ビールとかじゃなくて緑茶割りだけど」
男「あーとても良いと思う」
女「でも思うんだけど、同じ行動でもする人によって魅力が変わるのってなんなんだろうね。たまにいるじゃん、凄い美人ってわけじゃないけど、なんかいいなって子。川島小鳥の写真のモデルみたいなさ」
男「デジタルよりフィルムカメラが似合うタイプの子ね。例えて言うなら『フィルム女子』とか?」
女「そう、そんな感じ。私もそのフィルム女子になりたい」
男「僕は君の姿を見たことはないけど、フィルム女子じゃないの?」
女「自分ではなんとも言えないけど、心はフィルム女子かな」
男「というか、自分はフィルム女子だぞーってインスタでハッシュタグでも付ければいけるよ、きっと」
女「やだ、恥ずかしいしなんかイタいじゃん」
男「間違いないね。けど大丈夫だよ、インスタなんてイタいことを正当化させておしゃれのフィルターかけてるだけだから。根本のやってることなんてみんな同じでイタい。けどそれはみんな分かってることで、そうでもしないとダメなんだよ」
女「難しく考えすぎじゃない?私が考えるインスタグラムはただの自己PRアルバム、それも全員が全員自分に興味を持ってると勘違いしてる人のね。偏見すぎる?」
男「うん、かなり偏見だと思う」
女「でもそんな私もインスタグラムだったら凄い背伸びしてるし、いかにも頑張って『私ってイケてるでしょ!』って感じよ。自分でも分かってる。けどそういう背伸び作業が楽しいし、心地いい。インスタに投稿した内容で褒められたりしたら、それこそかなり喜んで舞い上がっちゃう」
男「みんなそんな感じだから大丈夫」
女「けどその分、誰かの投稿を見るのも好きよ。音楽とか映画とか服とか、誰かが投稿してるものはだいたいチェックするし、そこから新しく好きになることもある。同じような趣味嗜好の人がいると嬉しいし。カップルの投稿も微笑ましくなる」
男「カップルの投稿が微笑ましいは嘘?」
女「うん、半分は嘘かな。けど半分は本当よ?いいなーって羨ましくなる。数秒だけね」
男「フィルム女子はそんな感じなんだね」
女「フィルム女子の定義はなんだと思う?」
女「なるほど、なんかそれっぽいかも」
男「あとはなんだろう、なんか面白いなこれ考えるの」
女「トムとジェリー好きとか」
男「君のことだね」
女「嘘よ、半分ね」
ジュッ
ガラガラ