Night 7.『音楽』
ガラガラ
シュッ
フー
男「『音楽』っていう映画、知ってる?少し前から公開が始まってる映画なんだけど」
女「あ、Filmarksでみたかも。全国上映っていうより、少し小さい映画館でしか上映してない感じのやつでしょ?」
男「そうそう、ここからバスで10分ほど行ったとこにある映画館でたまたま上映されてたから観てきたんだ」
女「どうだったの?アニメでそういう感じの映画ってあんまり観たことないから気になる」
男「すごくよかったよ。多分、テレビとかスマホで観るので十分な映画って思われそうだけど、実際に映画館に足を運んで、大きな画面でいいスピーカーでそれなりの音量で観ると全然違うと思う」
女「ふうん。いい映画の楽しみ方ね」
男「おすすめだよ」
女「どういう内容?」
男「少しグレてる、と言っても悪さをめちゃくちゃするわけじゃなくて、それっぽい服装をして、喧嘩ふっかけられたら相手したり、放課後は学校でゲームしたり雑誌読んだらみたいな、ごく普通の不良?が、なんとなくバンドを始める、みたいな」
女「なんだかありきたりな感じ」
男「そう、でも少し違うんだ。そこらへんの青春ものとは違って、音楽の根本の部分というか純粋に音を楽しむってことを、体現してる感じかな。バンドだってドラムスとベース2人でボーカル無しだし、コードもクソもない演奏をずっとしてる」
女「ごめん、全然面白さが伝わらない」
男「うん、それがいいんだと思う。音楽だから、言葉で説明を受けても分からないものだよ」
女「まあ、音楽だもんね」
男「しかも最後の最後あたりで岡村靖幸の声が聴けるんだ。それだけでも価値があるよ」
女「岡村靖幸はめっちゃ良いね。あんまり聞かないけど好き」
男「ナードな感じね」
女「そう、決して完璧じゃないけど十分、というかそんな感じ」
男「あとなんだろう。フェスみたいなとこで最後演奏する場面があるんだけど、そのシーンはとてもよかった。最近アーティストの伝記物映画って多いだろ?だいたいそういう映画の売り文句って、ラスト20分が凄い!とか演奏部分を推しがちでさ、まあ本当に良いシーンではあるんだけど、それとはまた違った良さがあった。演奏を、曲を楽しむと言うより、音を楽しむ感じ。あの演奏をただイヤホン越しに聞いてもただの雑音だと思う。けれど映画であることによって全て調和されている」
女「そんなに褒めるなんて、珍しい」
男「僕は好きなものはとことん褒めるし、人に薦めたくなる」
女「薦めてる自分が好き、ていうのもある?」
男「もちろん」
女「だと思った」
ジュッ
ガラガラ