Night 6.『無意味の中の意味』
ガラガラ
シュッ
フー
男「何もしないで終わった1日だったな、今日は」
女「ずっと家にいたの?」
男「うん。起きたのが13時で、それから昼食を済ませて洗濯をして、それからYouTubeを見てたら寝ちゃって、起きた時には夕方だった」
女「そんな日ってあるものよ。元々は出かける予定だったの?」
男「いや、特に予定は無かった。やらなきゃいけないこととか、人と会う予定とか。でも何かをしなきゃとは思ってたんだ。思ってただけだけど」
女「そういう日って何か寂しい気持ちにならない?私もたまにあるけど、陽の光も浴びないで誰とも合わない日って、なぜか虚しくなる。自分って空っぽだなとか、何のために生きて今日を迎えたんだろうって」
男「存在意義を考える」
女「そう、でも考えるだけ」
男「時間が経って明日になればそんなことも忘れてしまって、また同じ日を繰り返すんだ。誰かが決めたことじゃないし、自分で決めてるわけでもない。けど定期的に、季節が変わるようにまた繰り返す」
女「不思議よね。誰とも会ってないし嫌な事もないのに、ストレスのようなものを感じるって。できれば何もせずに、好きなことだけをして生きていたいって思うはずなのに」
男「人と話さないとダメなのかもしれない」
女「映画も観てないの?」
男「観る気にもならなかったな」
女「たぶん、何もインプットできてない日は落ち込むのだと思うの。映画とか人との会話とか、ただ散歩をして見た景色とか、その時聴いてた音楽とか、ふとその時思い浮かんだアイデアとかさ、自分の何かしらの行動で生まれたものって言うのかな」
男「たしかに今日は特になにもインプットしてないな、、、今日という日からは何も生まれてないし、意味がある1日では無かった気がする」
女「そういう日でもいつか意味を持つわ。そういうものよ、大抵の事はそうなるの」
男「何もしてない日が?」
女「ええ、そうよ。実際に今、こうして何も無かった日を私と共有してる。ちゃんとアウトプットしてるじゃない」
男「でもそれって僕にとっても、君にとっても意味ある事なのかな?」
女「特に無いかな笑」
男「正直だね」
女「でもそういう話って好きよ。人って、どうしても自分が不幸に感じたり、落ち込んでる時とかって同じような気持ちになってる人を探しちゃうものだもん。そう思わない?」
男「間違ってはないかも。でも、僕は落ち込んでるわけじゃないよ」
女「それならよかった。ただ、無意味な1日を過ごした人が横にいるって分かっただけで私はちょっとだけ救われた気がした」
男「君は今日何をしてたの?」
女「映画を観て、寝て、映画を観て、、、あなたとそんなに変わらない日だった」
男「なるほど。たしかに、今それを聞いて僕も少し安心感がでた。自分だけじゃないんだって」
女「マイナスとマイナスをかければプラスになる?」
男「だといいけどね」
ジュッ
ガラガラ